うけいれる[受容]
モデルであり、タレントとしても活躍している
「滝沢カレン」さん。
なぜか好きになれない。
いや、
好きになれなかった…というのが正しい。
テレビで活躍し始めた頃は
数多いるハーフタレントのうちの1人としてしか見ておらず、
日本語を知っているはずなのに
突拍子もない言い回しをして
「何言ってるんだろう。」
「そこまでしてキャラ作りをするなんて、芸能界は本当に大変よね。」くらいに
皮肉めいた感覚で見ていた。
◇
不思議なもので
彼女の活躍が増えるにつれ
イヤでも目がいく。
イヤだからこそ見てしまうのかどうかはわからないが、
興味の対象に変わっていく。
すると、
「訳のわからない日本語の使い方をするハーフタレント」という認識から
「ここぞという場面で絶妙な言い回しを使い分ける、日本語を私より知ってる女性」という尊敬の対象に変わる。
場を和ませたり、周りの意識を惹きつけたりするのは
「天然」なのか
「緻密な計算」によるものなのか。
◇
そんな彼女が書いた本を買った。
以前、料理本を出版した時にも気になってはいたが
その時は、書店でパラパラとページをめくるだけで買うことはしなかった。
今回は、
名作をもとに彼女が新たに創作した物語集であることに
彼女の文章を読んでみたい衝動に駆られた。
読んでみて、
「滝沢カレンのイマジネーションへの羨望」というのが
率直な感想。
そして、
「なぜか好きになれないタレント」という彼女への見方は
いつのまにか
「ついつい意識してしまう魅力的なタレント」にすり替わっていた。
「嫌だ」として排除するのは容易いこと。
「相手がどういう人なのか」
「相手は何を考えているのか」
そんな風に見方を変えることが
相手の存在を受けいれるきっかけになるのだとも気付かされた。
◇
滝沢カレンさんの作品の賛否については、ひょっとすると色々あるかも知れないが
小難しい本はニガテ…という人にも
名作を読み尽くした人にも
ぜひ、一度手に取って味わって欲しい本です。
『 馴染み知らずの物語 』(ハヤカワ新書)